大阪と奈良の県境へ、頼まれてお墓を見に行きました。施主は良家の奥さんとその実母に当たる方でした。 私がお墓を見て、 「あなたのご主人は終生女性に好かれる人です」 と申しましたところ、奥さんとお母さんの顔色が見る見るうちに変わりました。ものすごい剣幕でご主人の悪口を言われはじめたのです。 あまりその言い方が憎悪に満ちているので、他人の私が聞いていても聞きづらく、 「人にはそれぞれ幸・不幸がありますが、あなた方二人の考え方は間違っているのではありませんか」 と申し上げますと、 |
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「主人が遊ぶ方が良いのですか」とすごい剣幕で言ってこられました。 そこで私は、 「人を愛することは人間の権利と違いますか。あなた方二人の話を聞いていますと、なるほどご主人がよいとは思いません。 しかし悪いとも思いません。何故かと言いますと、原因があるからです。 あなたの考え方はあまりにも独占的すぎないでしょうか。世の中は持ちつ持たれつです。 不幸な人があるから幸福な人があり、金の無い人があるから金の有る人ができるのです。 あなたが指にはめておられる指輪は相当高価な品だと思いますが、良い着物を着たり、宝石を指にきらめかして好きなことを言っておられるのは、誰のおかげですか。 良いことはご主人に感謝なさらなければいけません。 悪いと思われることはあなたの言動に独善的なところがあるからです。 それはあなたに和合するという気持ちがないからです。 あなたがご主人を独占し、自分の思うようにしようとなさるから、ご主人が抵抗し反発なさるのではありませんか。 ご主人の気持ちが他の女の人へ引かれるのをくい止めようと思われるのでしたら、家の根となる墓を根本的にやり変えられると同時に、ご主人を独占するのではなく和合するように持っていかれたら、あなたも幸福になられるのではないでしょうか」 と申し上げましたところ、 「私はこれまでにいろんな方に話を聞いてもらいましたが、誰も彼も全面的に主人が悪い、勝手な人だとおっしゃいました。 今まで主人を恨んでいましたが、私のいたらないことがよくわかりました。これからは私の方から和合するように努めます」 と、やっと晴れやかな顔をされました。 墓も新たに建てられ、現在はご夫婦仲も円満で幸福に暮らしておられます。先日お会いしましたが、心から喜んでおられました。 墓を直されたから幸福になられたのか、夫婦和合するよう気持ちを変えられたので幸福になられたのか、それはわかりませんが、幸福になられたことは事実なのです。 |