信仰の究極は、悔いを残さないことだと思います。今死んでも明日死んでも、なんら悔いを残さぬ心境が真実の信仰であり、死ぬ間際にいろいろな未練を持つのは本当の信仰ではありません。
 いかに信仰心があつく全てのことに悔いを残さぬ人でも、最後に行く場所、つまり墓地の無い人は落ち着く先がなく未練を残されます。信仰と「相(かたち)」の違うところです。自分はあらゆる人に愛情を注いでおり、自分を悪く言う人が無いと思っている人が多勢おられますが、私はそれは強烈な独占欲にすぎないと思います。
 先祖の祀りごとについても愛情の強い方は、他家の無縁墓を除いてでも先祖の入るところ、自分や子孫の入る墓地を選定する人があります。自分の先祖、子孫を愛するがためにされることではありますが、結果は良くありません。
 自分のお墓を建てるまでに無縁塔のお祀りをされる方、貧しい人に名前も言わずに寄付する方、全てに名前を出さぬ方は、同じ愛でも慈愛だと思います。慈愛こそ一番大切な信仰につながっていくのだと私は思います。人間だれしも信仰のない人はありませんが、信仰だけの人は金に恵まれない人が多いようです。
「なぜか・・・・」
 それは何もかも有り難くなってしまうからです。慈愛を持って陰徳を積まれる方こそ金に恵まれます。
「なぜか・・・・」
 陰徳を積もうと思えば、人一倍働かねばならないからです。慈愛と働くことの徳によって金に恵まれるのだと思います。
 一代で財を築かれた分家初代の方は、よく生家の墓も兄弟の墓もただ自分の愛情だけで一緒に墓を建てる事があります。しかし十年後に財が無くなるか、男子、子供がよくいっておりません。親類といえど結果的に、他家の仏を独占してしまうことになるからです。
 京都西方の分家初代の方で不思議なことがありました。
 その方は、家業は農業をしておられました。松崎整道先生の本を読まれて、お兄さんに先祖の墓を墓相で建てるように勧められました。しかしいくら言ってもお兄さんは建てようとしません。その方は、本を読んだだけで墓の知識が得られたと思われたのでしょう。お兄さんの代わりに自分が先祖の墓を建てようと一念発起し、先生の指導も受けずに、墓相の本に載っているとおり、まず墓地を買い入れ整地されたのです。
 中の土がけがれているというので、墓地を五尺ほどの深さに掘られました。これだけ掘りますと、あと、赤土を入れても盛り土の上に石碑が建つことになり、いろいろな悪い結果が起こります。少なくとも五年間は、土が自然に固まるまで放っておかなければよくありません。墓地内の掘った土のあとに赤土を入れなければなりませんので、つるはしで山肌の崖を削り赤土を取っておられたのです。すると不思議にも、上の方の赤土の固まりが、その方の背中に落ち、膀胱が切れて一晩中苦しんで、気の毒にも苦しみながら亡くなられたのです。
 先祖の墓を正しく祀ろうと思われ、一生懸命された結果が死だったのです。
 その後、このことが近所の評判になり、「墓相の墓づくりをしたら亡くなられた」という噂になったのです。近所の方々は墓をするのが気味悪くなり、「墓をさわれば死ぬ」というので墓を建てられる方がなくなってきたのです。
 その時、町内の木村さんという方で竹谷先生の本を読まれた方がいました。「墓は恐ろしい、ぜひ先生のご指導を願いたい」といって先生宅へ頼みに来られ、その話をされました。
 先生は「一度現地を見せてもらおう」と言われて、私がお供をして墓地へ行ったのです。木村さんは非常に熱心な方で、亡くなられた方の奥さんを連れてこられたのです。「なぜ先祖の墓をするのに主人が亡くなったのでしょうか。主人は悪いことをしたこともありませんし、どうしてそういうことが起こったのか悔やまれてなりません」と未亡人は涙を流しながらおっしゃられ、先生に「原因はなぜなのですか」と聞かれたのです。
 私も一緒におりましたが、先生のお答えに「なるほど」と思いました。答えは簡単でした。
「たとえ現在は兄弟でも、三代後には他人のようになります。あなたのご主人は立派な先祖を祀る兄さんがあるのに、兄さんの家の墓をつくられたことは、他家の仏を横領されたことになるのです。第三者からはそのように見ていきます。他家の先祖を横領されたのだから、一番大切なことで横領されることが起こったのです。お気の毒ですが今さら仕方がありません」と申されました。
「よく得心がいくなら、あなたはさっそく分家としての墓を建てなさい」と指導され、未亡人はさっそく分家墓を建てられました。
 今は子供さんが立派になられ、娘さんも良い家へ嫁がれ、たいへん幸福な生活をしておられます。また近所の方が徳風会の墓地を整地され、百軒ほど墓相の墓が建ちました。
 初代の竹谷先生は亡くなられましたが、先生指導の墓は整然と建ち並び、十年前は寂しかった町も今は商店街となり、皆さん隆盛にやっておられます。
たとえ親類でも恩人でも、決して他家の墓はされぬようによくお考えください。厳然たる事実なのです。





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