京都東山の麓に地蔵山という京都市営の墓地があります。
 京都はご存じのようにお寺が多く仏都と言われるほどで、仏教徒の墓はどこにでもあるのですが、神徒の墓は期せずしてこの市営墓地に集中し、天理教、金光教、黒住教など色とりどりに建立されています。
 先年、○○教の教会主が信徒五人を従えておいでになり、
「墓相というものが本当にあるのですか、どうも信じられません」と申されました。
 そこで、「 風会式墓相というのは宗旨宗派にとらわれず、もっぱら墓の相をカメラと磁石と物差しを使って統計的に研究されたものです」と説明いたしました。
「実地に現地の墓を見て質疑に答えつつ、得心のいくように説明しましょう」ということになり、さっそく墓地に参りました。各派各教会のお墓について次々に説明し幾分おわかりになったようでした。
 一番最後にとても変わったお墓が目に付きましたので、その前に立ち止まりました。図のようなお墓でした。
 棹石正面に俗名の文字が刻んであり、頭部は戦死者の墓石のように三角に尖り、尖部の前面にコブシの半分ぐらいの穴があいています。 棹石の横手の方が飛行機のプロペラのように歪曲して見えるので、物差しで計ってみると、前幅は約七寸、後幅は約六・五寸しかありません。これは石屋さんが素材石を買った時、前と後ろと寸法が違うので目立たないよう細工して取りつけたのでしょう。また墓地が狭くて次の代の墓石を建てる余地のないお墓です。
 私は、「このお墓は、養子となりひいては血統が絶え絶家になる」と申しました。
それは何故かとのご質問ですので、
「本名なり俗名は生きている間のことで死ねば仏徒は戒名を、神徒は霊名または号をつけるものです。この相はいつまでも生きている姿です。 生き続けているということは次代の必要がないわけです。だから血統が絶え絶家になります」と申しますと五人の方は顔を見合わせておられました。
教会主の方が、「では何病で死んだか」と一番難しい質問をされました。
医師でも死人を見て即座に病名と死因の診断を下せるものではないでしょう。まして相手は石です。
 私はじっと考えました。師匠がいつも「墓は石と思うな、人と思え」と言われました。棹石を人と例えて観相しました。
「俗名で刻入されている人は石塔の頭に穴があいているので、脳の病気、精神病になり、肉の減る病気で、おそらく腰から下がふらふらになって亡くなられたはずです」と申しますと、五人ともびっくりされ、
「なるほど墓相は真実だ、実は二人とも精神病で、栄養失調で亡くなったのです」と、感心しておられました。
私は栄養失調という言葉がとっさに出ず、肉の減る病気と言ったのです。ふらふらになるという意味は、棹石の寸法が前約七寸、裏約六・五寸といびつだったからです。
 これがご縁で、教会主は吉相のお墓を建てられ、信徒も増えてたいへん喜んでおられます。



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