以前、三十才ぐらいの女の方が実家の母親を連れて来られました。
「私は嫁入りして七年になりますが、まだ子供ができません。分家初代ですが、供養塔を建てたらよいと家相の先生にお聞きしました。墓地がないので墓地を買いたいのですが、地形が吉相になっているかぜひ見ていただきたいのです」と依頼されました。
 分家初代の墓地のあり方などいろいろお話をしまして、現地で吉相の
墓地を選定して帰ろうといたしますと、娘さんが、「せっかく忙しい中を来てもらったので、ついでといっては失礼ですが、近くの衣笠山に実家の墓地があります。十分くらいで行けますのでぜひ見ていただきたいのですが」と申されました。
ところが一緒におられた母親が、「私のところのお墓は見てもらわなくても、皆が結構に暮らしています。またいろいろ聞けば、気になるので見てもらわなくとも結構です」とおっしゃって、娘さんと言い合いを始められました。
娘さんがあまりに熱心なので、私も見に行く気になり、「それでは・・・」と、しぶしぶの母親と三人で見に行きました。
 三本建っている真ん中の墓が徳風会で建てたような良い墓なのですが、次に建てる余地がないのです。なるほどと思いました。
「この真ん中の墓を建ててから、あなたの家ではお金ができてお金に不自由することはありませんが、長男が相続することができません。もし相続されたとしても、
体が弱いか財産が無くなるかどちらかです」と言いますと、母親が憤然として、「長男は相続しています。この娘の弟です」と申されました。
 私はあまりに石碑の形が良いので、私の見損ないか、もう一度石碑を慎重に見直しました。よく見ると石碑の頭が図のように割れているのです。私は「頭を刃物で切らねばならないようなことが起こっていたでしょう」と申しますと、母親は「そんなことは一度もありません」ときつい剣幕です。
 私は「その場合、あなたの家がよっぽど功徳を積んでおられたら別ですが、絶対に頭を切らねばならぬことが起こります」と言い切りました。が、あまり石碑の形が良いので、言い切ってから迷ったのですが、何とか答えが出るだろうと気にしながら帰りました。
 不思議なことが起こったのです。翌日朝から大阪へ行き、夕方自宅へ帰りますと、私が家を出た後、五度もその家から電話がかかっていました。「ぜひ電話してください」とのことでした。
 さっそく電話いたしますと、昨日家へ帰ってから母親が怒って私の話をしたそうです。長男がその話を聞いていて、近頃頭が痛いので朝から病院に診てもらいに行ったそうです。すると、頭の中に「できもの」ができて、すぐ手術をしなければ命が危ないということだったのです。それで「頭の割れた石碑をどのように修理したらよいか」と切羽詰まったようにお尋ねになられました。
「一応、応急措置として棹石だけ同じ形ですぐ取り替えなさい。割れた石碑は慰霊塔にていねいにお祀りをし、新たに吉相の墓地を選定してすっかりやり替えなさい」と申しました。
 長男の方は無事に手術がすんで退院されたそうです。石碑の頭が割れておればなぜそういうことが起こるのかわかりませんが、そういうことが起こったことは事実なのです。


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